トップ手引き私紹介日記帳作品集リンク連絡箱

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生まれたばかりの私は、沢山の手に囲まれて、手を眺めていた。彼らの視線よりもずっとずっと低いところから、流れていく冷たい手を眺めていた。

人通りの多い道路で、私は段ボールの中に入れられて一人ぼっち。そこに食べ物はなく、段ボールには何やら文字が書かれていた。

「どなたか拾ってください」

時折、小・中・高の女学生が私に手を差し伸べてくれた。その中には一般に、社会のクズだと蔑まれそうな人だっていた。でも、私に手を差し伸べてくれなかった社会的に有能なサラリーマンや、頭の良い学生とは比べ物にならないくらい彼女らの手は温もりを知っていた。彼女らの手は、私をこの小さな世界から連れ出してくれこそしなかったが、十分過ぎる程温かかったのだ。

ある日、私をこの世界から連れ出してくれる手と出逢った。細い指を持った小さな、小さな手だった。その手は、私が今までに出逢ったどんな手よりも、私が今までに見てきたどんな手よりも、温かかった。この温もりは、私の心にまで光を射し込んでくれる。そして、その温もりと光は手をつなぎ、私をこの小さな世界から連れ出してくれたのである。

数週間後、再び私は段ボールの中にいた。もう何日が過ぎただろう。既に意識は朦朧としており、手を眺める余裕すらない状態だった。思い出すのは、私が出逢った数々の手だけ。

一番温かかった手は、昔此処から私を連れ出した手、最後に私に触れた手、そして私を再び捨てた手。

あの手には感謝している。私はあの手に温もりを教えてもらったのだから。

何度もその手の温もりを思い出し、私は僅か数週間という短い生涯に幕を閉じた。

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あたまてびきわたしにっきさくひんつながりてがみ

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