男は今まさにそれが 思いついたことのように ポケットから林檎を取り出して 着ていた服で擦り始めた 林檎は大きくはなれなかったものの 身体の汚れが少しずつ 取り除かれていくのを目にして 無性に嬉しくなった そこで男はガブリと 豪快にかじり付いた その幼いままの林檎は 売り物にこそならなかったが 甘味は凝縮されていて 酸味がほんのりと香り 口の中で広がり とても美味かったのだろう 男の幸せそうな笑顔が 林檎をさらに嬉しくさせた