ファーストフードの店内は昼過ぎで大いに賑わっていた。
もう騒々しいくらいに。
大半の客が季節限定のセットメニューを食べている。
私と親友の栞はいつもと同じ、通常のセットメニュー。
経営戦略にまんまとはまってどうするのよ!!と負けず嫌いの私は心の中で思いながら、横に座っている彼を見つめる。
同じように季節限定のセットメニューを頬張っている。
彼も、まんまとはまったその一人。
だけど、もうそんなことはどうでもよくなっていた。
食べ始めると、些細な怒りなんてどうでもよくなってしまった。
ただひたすらに、食べ物で膨らんだ柔らかな彼の頬が愛おしくて。
許すこと(正確には忘れること)にした。
私の視線に感づいたのか、彼が視線を私へと向けた。
その瞬間、心の奥底からゾクリと快感が湧き上がる。
これだ、と思う。
これが彼の沢山ある魅力の一つなんだ、と。
大きくてまあるい円らな瞳。
一瞬で目標を捉えて、そのまま決して逃がさない。
見つめられるとたまらない。
もしかしたら、私だけかもしれないけれど。
いや、むしろ、そうであって欲しいのだけれど。
もはや、病み付きになるほどの一種の快感を覚えて、うっとり見惚れてしまう。
幸せのひととき。
「あんたたちホント、ラブラブよね。見ているこっちが恥ずかしいわよ」
呆れた様子で栞は言い放った。
それとほぼ同時、私は心の中で否定していた。
そうじゃないの、と。
誰にも気付かれないように、僅かに膨れた頬。
すねたようにフライドポテトをかじる。
すると彼が私の頭を優しく撫でながら言った。
私の代弁をしてくれるかのように、極自然に、さらりと言い放ったのだった。
「そんなことないよ、まだまだこれから。二人の先は長いんだから」と。
私は視線を落として、震えるように感動した。
全身が、心臓から広がるように火照っていくのが分かった。
嬉し過ぎて、涙が出てしまうくらいだった。
でも、私も大人の女性(のはず)なので、そこはクッとこらえて、また彼に視線を注ぎ直す。
それでも、行き場のない気持ちは錯綜して。
今すぐに抱き締めたい、包み込まれたい、と強く願わずにはいられなかった。
ただ、この場ではそうする訳にもいかず、また彼に懇願する訳にもいかず、仕方なく視線を前方に戻した。
そんな私の胸の中や頭の中は、小さなパレード状態。
店内に負けないくらいに賑わっていた。
親友はすっかり呆れ果てた様子で、彼に対して「ハイハイ」と相槌を打つ。
そうして、遠くを見つめるようにして、深い、ふかい、底知れぬ溜め息をついた。