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有難う (0.65KB)

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傷付いて誰かが落としたコトバを、素知らぬ誰かが拾って「それはまだ生きている」からと家に持って帰りました。そのコトバが捨てられたのか、望まずに落ちてしまったのか、それは知る由もありませんでしたが、コトバは拾われた家で快く暖かく歓迎されました。毛布とあったかいミルク。それから専用の部屋まで与えられて、まるで家族のように扱われました。

はじめは落ち込んでいたコトバも、次第に元気を取り戻し始め、真新しいコトバをいくつか覚え、それを使えるまでに至りました。そうしてとても嬉しそうに、笑うことを覚えたのでした。けれど、いつまでもお世話になっている訳にはいきませんでした。コトバには元々の役割が与えられていて、それを必要としている沢山の人いたからです。以前にこのコトバを捨ててしまった人でさえ、今は必要としているように思われたからです。

旅立たねばならないときは刻一刻、もう既に目前まで迫っていました。そのため、コトバは命の恩人である素知らぬ誰かとその家族とに、今の気持ちの全てを伝えたかったのですが、残念なことにコトバは自分の今の素直な気持ちをそのままに表現してくれるコトバをまだ知りませんでした。

自分自身を未熟に感じたコトバは、胸をやるせない思いで満遍なく深く、いっぱいに満たしました。そうしてついには、何にも言わず家を出て行くことに決めました。

伝えたい思いのその代わりとして、

一枚のまっさらな紙切れを置いて。

紙切れには何も書かれていませんでしたが、その紙切れを手に取った素知らぬ誰か、またその家族は柔らかく微笑みました。目尻をたらんと垂れさせて、口角をキュッと上げて、小さな笑窪を作って、とても幸せそうに。

そうして、ほくほくと緩んだ穏やかな表情で優しく、お互いを見つめ合ったそうです。

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あたまてびきわたしにっきさくひんつながりてがみ

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