水
指の隙間から
零れ落ちるように見える
それは
実はとめどなく
溢れていて
むしろ僕は
溺れてしまいそうになるけれど
いくらその中に身を投じても
守られている実感しか
抱けはしなかった
*
水
僕はそれを守りたくて
離さないままでいたくて
何度も何度も
頭では無理と解っていても
抱擁を試みてしまう
一度、取り込めばいいのだろうか
もし、そんな事が可能ならば
口移しでこれを
この水を
君に与えたいというのに
*
水
一つ思い出すのは
果てしなく遠い海の記憶
底の知れない深い蒼の記憶
本当は光なんて一切届かなくても
あたたかいものは溢れて来るということ
まるで今の今まで
一枚の木の葉によって
蓋をされていたかのように
*
水
生まれ出でる前に一度
僕らはそれと出会っていたというのに
それが愛だとは気付かずに
忘れ
果てて
生まれて来てしまったのかもしれない
だから懐かしい波の音にも
残された足の跡にも
気付かない振りをして
歩いてしまいがちになる
風が消し去ったものを
本当はそこに残されているものを
確かに美しいものを
見落としてしまいがちになる
そのことに日々
胸を痛める
*
水
守りたい
僕はこの手で
掬えもしないそれを
掴んでいたい
確かに全身で
凡ての心の中で
抱き留めていたい
元気のない日も
元気のない君にも
愛という名のそれを
注ぎ続けてあげたい
そう在れる僕でありたい
*
水
記憶の奥深くへと
あたたかな懐かしい場所へと
あなたの頬へと
落ちていった
一滴のそれ
心を湿らせるそれは…
*
愛という名の
*
あいというなの