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初夢 (0.61KB)

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目映い陽射しに覚醒したとき
頭上は緑の木々に覆われていた
葉先は木漏れ日をうけ
いじらしく恥じらっている
そよ風は悪戯に葉先をひるがえし
見事なとんぼ返りで
したり顔
私は真白のハンモックの上で揺られながら
和やかな光景に目を閉じ
まだ肌に残る優しい寝心地を
何度も反芻した
恍惚の余韻は全身を陶酔境へと送る
二三度伸びをすると
恍惚はさらに快く
まるで天泣のように身に降り注いだ

身体を起こすと
ハンモックの結び目には
薬指ほどの背丈の少女が腰掛けていた
少女は桜色のワンピースを着ている
背にはステンドグラスように色鮮やかな
半透明に輝くフィルム状のものがついている
少女は私と目が合うと
にこりと愛らしい笑みを浮かべ
優雅に宙を舞ってみせた
彼女もしたり顔だ
私がえくぼを見せると
彼女は今度はハンモックのまわりを軽やかに舞い
そうしてハンモックの縁に腰掛けた
そよ風が悪戯に何度も通り過ぎる
そのたび、彼女のワンピースは白百合のように膨らみ
彼女は少し俯き加減に恥じらいつつ
頬辺を薄紅に染めた
彼女の恥じらいはあまりに清楚で
美しく
心を鷲づかみにする魅力を兼ね備えている

彼女の名前は「アリス」という
アリスは私のことを「ウサギ」と呼んだ
私は心底驚いたが
それが私の名前で間違いはないようだったし
実際、私は白い兎になっていた
アリスの背丈はウサギの耳ほどになった

ウサギは真白のハンモックの上を転がり
心地よい柔毛をじっくり堪能してから
ぴょくんとハンモックを飛び降りた
若草色の芝生は前足に触れた瞬間から
よく馴染んだが
少々くすぐったくも思えるのがおかしかった
そよ風は悪戯に萌葱色の香りを運び
ウサギは気品ある芳香に身震いした
晴れ晴れな思いで頭上を見上げると
木漏れ日に無数の葉先が輝いて見えた
健やかに愉快な気分だった

アリスはウサギの背に跨ると
両耳を掴み、野花のようにくしゅっと笑った
そうして身を乗り出し
額にひかえめのキスをした
ひかえめだったものの
アリスのキスはまるで生チョコレートで
たっぷりと甘ったるく
愛おしく
ウサギを包み込み、たちまち幸福にした
アリスの花唇はマシュマロのように
やんわりの愛を語った
アリスに接吻されたウサギの額には
見事なまでに真白い牡丹の花が咲いた
美しいものが好きなの
アリスは目の前で流麗に踊りながら
まるで独り言みたいに呟く
全身は星々からの寵愛を受け
光り輝いている

ウサギは額の真白い牡丹を引っこ抜いて
それをアリスにプレゼントした
途端にアリスは苺の瞳をまあるくし
悩ましいほどに美しい微笑みを浮かべた
ウサギの胸は熱くなった
白牡丹の花の中央では
金剛石が立派な輝きを放っている
アリスはこくりと頷いた

そよ風は悪戯にアリスの髪をなびかせる
アリスのうなじは陶器の質感を持ち
雅やかにきらめいている
妖艶な色香がそこかしこに充満し
うっとり
根こそぎに奪われてしまったウサギは
たまらずアリスを強く抱き締めた
心臓は窮屈な部屋を酷く嘆いていた
そよ風は悪戯に二人をはやし立てたが
二人の耳にはもう何も届かなかった

ウサギはアリスの顔を覗き込んだ
しかし
アリスはもはやアリスではなくなっていた
ウサギの愛する人に姿かたちをかえていた
さらに
ウサギももはやウサギではなくなっていた
彼女の愛する私に姿かたちをかえていた

互いに
「愛している」
という一節を口ずさもうとした瞬間
無情にも
突然に幕はおろされた
遣る瀬無い祈祷が胸いっぱいに広がる
私は泣きたい気持ちになり
半ば諦めるようにして
目覚めた

頬辺の水溜りを袖口で拭うと
かすかに牡丹の凛とした香りが漂った
私は愛する人の名前を歌った
愛は昨年よりもぞっとするほどに深く
痛ましく
内側から熱く、熱く燃え滾っていた

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